“台湾の鬼才”エドワード・ヤン監督の傑作『恐怖分子』デジタル・リマスター版がいよいよ2015年3月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国劇場公開されます!
ホウ・シャオシェンと並び80年代、90年代の台湾ニューシネマを牽引した映画監督エドワード・ヤン。2007年、59歳の若さで亡くなるまで、『カップルズ』(1996)、『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)など、作品ごとにまったく異なる作風で計7本の長編と1本の短編を監督。
彼の長編3作目となる本作は、1986年に発表されると、カンヌ国際映画祭、ロカルノ国際映画祭(銀豹賞受賞)で絶賛され、ヤンの名前を一躍世界に知らしめました。そして、無軌道に犯罪へと向かう10代の少女の心理を繊細にとらえた視線は、14歳の少年による実際の女子学生殺人事件をもとにした次作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』へとつながっていきます。
『恐怖分子』は彼の出世作であり、決して多くはないフィルモグラフィのなかでも謎の多いストーリーと精緻な構成がファンを魅了し、愛されてきた作品なのです。
本作の構想は、不良少女・シューアン役のワン・アンが「見知らぬ番号へいたずら電話をしたことがある」と監督に告白したことから始まったそう。少女の何気ない行為が見知らぬ人々の平穏な日常生活を破壊するように、誰もがまた知らぬ間に他人を傷つける「恐怖分子」になり得るという、現代社会が抱える危機。結婚の破綻、少年少女の犯罪、不正行為、暴力の衝動・・・。
人々が日常のなかに隠していた狂気と孤独を描き出す本作は、独創的なミステリー群像劇である一方で、現代に生きる私たちすべてに通じる普遍的な人間ドラマです。
『恐怖分子』というタイトルから、ホラー映画かな?と思ってしまいがちなのですが、この作品はホラーではありません・・・。私たちのすぐそばにあって、自分とイコールで考えることができてしまう、とてもリアルなお話です。なにより、現実になり得るという点でホラーよりホラーかも。肉体的にコワい映画ではありませんが、精神的にコワい映画なのです。
日本では1996年から19年ぶりの劇場公開となる『恐怖分子』。エドワード・ヤン幻の傑作が、デジタル・リマスター版でスクリーンによみがえる!上映期間中には、エドワード・ヤンのデビュー作を収録したオムニバス映画『光陰的故事』も併映!
映画『恐怖分子』は、3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開です。
監督:エドワード・ヤン
原題:恐怖份子 1986年 | 香港・台湾 | 109分
出演:コラ・ミャオ/リー・リーチュン/チン・シーチェ/クー・パオミン
/ワン・アン/マー・シャオチュン/ホアン・チアチン
脚本:エドワード・ヤン/シャオ・イエー
脚本顧問:チェン・クォフー
撮影:チャン・ツァン
編集:リャオ・チンソン
音楽:ウォン・シャオリャン
1987年 ロカルノ国際映画祭銀豹賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞
1988年 ペサロ映画祭最優秀監督賞、カンヌ映画祭「ある視点」部門出品
銃声が響き渡る朝。警察の手入れから逃げだした混血の少女シューアン。その姿を偶然カメラでとらえたシャオチェン。上司の突然の死に出世のチャンスを見出す医師のリーチョンと、執筆に行き詰まる小説家の妻イーフェン。何の接点もなかった彼らだが、シューアンがかけた1本のいたずら電話が奇妙な連鎖反応をもたらし、やがて悪夢のような悲劇が起こる・・・。
【同時上映】『光陰的故事』
ビートルズの楽曲が彩る、エドワード・ヤンのデビュー短編
台湾の若手監督たちが、60年~80年代を背景に子ども時代から青年期までの4つの物語を監督したオムニバス映画。「中学生」編となるエドワード・ヤンの「指望」は、60年代を舞台に、母と姉と暮らす女子中学生の淡い初恋と大人へのめざめを描く。ヤンの監督デビュー作。
光陰的故事 IN OUR TIME
第1話「小龍頭」:タオ・ドゥツェン監督
第2話「指望」:エドワード・ヤン監督
第3話「跳蛙」:クー・イチェン監督
第4話「報上名来」:チャン・イー監督
1982年 | 台湾 | 106分 | 1982年 ロンドン映画祭出品作品
©CENTRAL PICTURES CORPORATION