ホラサスDAYS

人々を魅了してやまない“霊”の存在を認めさせる実話ベースのエクソシズム

NY心霊捜査官レビュー
覗いてはいけない禁断の世界、だからこそ覗いてみたい

『NY心霊捜査官』は、いわゆる“悪魔祓い”の話である。
今までも、欧米のエクソシズムを題材にした映画は数多く制作されてきた。有名どころでいえば『エクソシスト』や『オーメン』『悪魔の棲む家』そして、昨年アメリカで大ヒットを記録した『死霊館』といったところか。スコット・デリクソン監督作の『エミリー・ローズ』もそうだ。そして、これら全て実話がベースになっている。

こんなにもたくさんのエクソシズム作品があるのにも関わらず、次々に新たな作品が生まれる。それほど“悪魔”や“霊”というものは、私たち人間にとって魅力的なものである、ということなのだろうか。まさに「怖いものみたさ」という言葉がぴったりだ。そして、これらの多くは実話がベースである。嫌でも“悪魔”そして“霊”の存在を認めざるを得ない。

だからといって、普段からそれらを身近に感じている人など、そう多くはないだろう。自分の知らない世界であるからこそ平気で観ていられるわけであって、ホラー映画の世界がもし現実になんてことがあれば、たまったもんではない。「覗いてはいけない禁断の世界、だからこそ覗いてみたい」そんな人間の心理を、手軽に、そして安全な環境下で体験できる、それがホラー映画の魅力のひとつなのかもしれない。

何でもイギリス人にとって“霊”は尊敬に値するらしく、“霊”が出ると言われる物件は価格がものすごく上がる。“霊”がいると、イギリス人は嬉しいのだという。しかし本作はアメリカでの話、そう喜んでもいられない・・・。
NY心霊捜査官 「容疑者は、人間ではない-」

本作も、実話がベースのエクソシズム作品だ。容疑者は、人間ではない。そうだ、容疑者は悪魔なのだ。『NY心霊捜査官』というお昼の連続米ドラマのようなタイトルからは想像できないような、不気味でダークな世界が、そこには広がっている。

主人公はエリック・バナ演じるニューヨーク市警ラルフ・サーキ。美人の妻と6歳の可愛い娘を持つ父親でもある。
難解な事件には独自の“レーダー”が反応するという、その特殊な能力、いわゆる“霊感”を活かして相棒のバトラー(ジョエル・マクヘイル)と共に悪魔を追いつめていく。

今までにない新鮮さ

冒頭の1時間は「これから何が起こるのだろう」というワクワク感がたまらない。
誰しも一度は行ったことがあるであろう、動物園がとにかく怖いのだ。夜の真っ暗闇の中、頼れるのは自分が持っている懐中電灯だけ。夜の動物園+灯りは懐中電灯のみ+徒歩移動+得体の知れない何かという、恐怖を煽る要素が二重にも三重にも重なっている、そのシチュエーションが怖い。
冒頭部分は、自分も共にその場にいるかのような感覚と「こんなの初めて!」という新鮮な気持ちを味わえる仕上がりになっている。ここで本作への期待がぐんと高まる。

なぜ悪魔祓いをするのか、その行動の意味

劇中のサーキは、人間ではない容疑者との戦いに没頭するあまり、自分の家族を危険にさらすことになる。これまでのエクソシズム作品といえば、自分の近親者に憑いた悪を祓う、というものが多くみられるのではなかろうか。それに対して本作は、近親者ではない誰かに憑いた悪との戦いである。言ってしまえば他人だ。“悪を倒すこと”ただそれだけに懸命で、“誰かのため”とか、“誰かを守りたい”とか、そういった“何が何でも倒さなければならない明確な理由”のようなものが、欠けていたようにも思う。感情移入しずらく、途中どうしてサーキはそこまでして悪魔祓いをしたいのか分からなくなってしまう。それ故であろうか、家族が単なるおまけにしか見えない。

オリビア・マン演じるサーキの妻は、家族をほったらかしにする夫を決して責めない。たとえ怒鳴られたとしても怒鳴り返すことはせず、お互い言い争いにならないような言葉の選び方を知っている。きちんと彼のことを理解し、尊重している、良くできた妻なのだ。そんな妻や娘を、あっさり魔の手に渡してしまうのである(妻のお腹には新しい命も宿っていたのに)。そしてあっさり助かるのだが・・・。サーキが単なるわがまま夫のようになっていた点が残念。

NY心霊捜査官 NY心霊捜査官 あっという間に悪魔祓い

いよいよ悪魔を追いつめてのクライマックス。
悪魔との鬼気迫る直接対決、そう簡単には退治できるまい、そう思っていた。しかし、途中から登場するエドガー・ラミレス演じるメンドーサ神父が、何やら呪文をかけあっさり悪魔祓いをしてしまう。結局、最後に活躍したのはメンドーサだ。彼なしでは悪魔祓いはできなかったのだから。本作は、悪魔との追いかけっこが長く、退治するのは意外と早い。そのあまりにもあっさりとした結末には、驚きを隠せない。クライマックスのさらっと感には、正直ちょっと拍子抜けだ。

まるで不気味なメリーゴーランド

ホラー映画ではおなじみの虫やぬいぐるみ、光や音の演出など、終始不気味にはなっているものの、目を背けたくなるようなゴア描写は少ない。そして、それらの恐怖シーンも決して多くはない。
しかし、タイミング良くそれらを入れてくるからであろうか、最後まで飽きることはなかった。ジェットコースター並みの速さではないが、観覧車ほど遅くもない。メリーゴーランドのようなスピードで物語は進んで行く。不気味なメリーゴーランドが回り続けているような感覚だ。ダラダラせず心地よいテンポで進み、適度に恐怖シーンがあったのも、飽きずに観られた要因かもしれない。

入りのつかみはばっちり、期待度がぐんと上がるものの、途中でやや失速気味に・・・。
けれども、冒頭部分のワクワク感はぜひとも劇場で体感してほしい。



監督・脚本:スコット・デリクソン『エミリー・ローズ』
出演:エリック・バナ『トロイ』、エドガー・ラミレス『ゼロ・ダーク・サーティ』
プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ
2014年 / アメリカ / スコープサイズ / 118分 / R18+ 原題:Deliver Us from Evil

STORY
何故、オレだけ悪霊の姿が見える、声が聞こえる-
ある夜、ニューヨーク市警のラルフは、動物園で子供をライオンの檻に投げ捨てた女を逮捕する。彼女は何かにとり憑かれたかの様に震え、口から泡を吹いていた。また別の夜、妻に尋常ならぬ暴力を振るった男を逮捕する。彼も何かにとり憑かれたかの様に凶気にふれていた。ラルフはこの全く別の事件の捜査を通して、自分にしか聴こえない、自分にしか見えない“何か”、を感じていた・・・。
実在のNY市警巡査部長の手記を元に映画化。この世には知らないほうがいいこともある-
“霊感”を持つ刑事が、その特殊能力を犯罪捜査に活かし、人間ではない“何か”が起こす事件の捜査に挑む。
全く別物だと思われていた複数の事件が、現場の壁に刻まれた“INVOCAMUS”(呼び寄せる)の言葉によって結びつく。その“何か”が悪霊で、一連の事件が彼らの犯行だと気づいたとき、ラルフ自身の家族にも魔の手が忍び寄ろうとしていた・・・。
実在する元ニューヨーク市警のラルフ・サーキが体験した戦慄の実話を『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジェリー・ブラッカイマーが完全映画化!<R-18>のこの現実世界を、知るときが来たー
人間ではない容疑者を追いつめた刑事、その行く末とは―
公式サイト:http://www.invocamus.jp/
twitter:https://twitter.com/invocamus0920

『NY心霊捜査官』
Blu-ray&DVD 2 月4 日(水) 発売&レンタル開始!
ブルーレイ 1 枚組 4,743 円 (税別)
© 2014 Screen Gems, Inc. and LSC Film Corporation. All Rights Reserved.
発売元・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 
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