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『死霊館』の前日譚。実話を元にした超常現象映画の楽しみ方

アナベル レビュー
実話を元にした超常現象映画の楽しみ方

実話を元にしたという映画の中で、超常現象を扱うホラーというのはその見方が難しい。まず事実を疑いたくなるからだ。すでに、実話を元にした『エクソシスト』や『悪魔の棲む家』の嘘が暴かれている今、ホラー映画ファンほど色々疑いたくなるのは当然だ。

また、かつてあった「撮影中に不可解な事故が起きた」など、まことしやかに流れた噂の数々も、現在の製作過程ではありえないことと判断できるし、仮に事実であってもも、現代において一般メディアで扱われることもなく、逆にそういったふれこみは作品の価値を下げてしまうことにもなりかねない。自ら誇大広告に騙されてエンターテイメントとして楽しもうという、ホラー映画ファンの支持を除いては。

『死霊館』の誕生

そんな中、『死霊館』は実在の人物を役名そのままに映画化し、作品に新しい説得力をもたらした。古典的な悪魔祓いの映画に関わらず、事実に味付けされた許容できる範囲の虚構と高いエンターテイメント性は、多くの観客の支持を得た。

『エクソシスト』『悪魔の棲む家』を原点とした場合、その進化系として『エミリー・ローズ』があったのに対して、『死霊館』は「原点回帰」したかのような作品だった。
annabelle5_mini その『死霊館』でひときわ輝いていた(?)のが、等身大に近い女の子の人形だ。主役の心霊研究家ウォーレン夫妻の自宅で保管されていた不気味な人形。「絶対に開けるな」という警告文が貼られたガラスケースの中で静かに、そして不気味にたたずんでいた、その人形の謎と誕生の秘密を明らかにするのが、映画『アナベル 死霊館の人形』である。『死霊館』の前日壇である本作は、まさにシリーズとしても「原点回帰」といった作品だ。

『アナベル 死霊館の人形』の見所

『アナベル 死霊館の人形』は『死霊館』を見ていなくても一本の作品として成立しているが、『死霊館』を観た人が思わずニヤリとする場面もあり、「知っているとより楽しめる」つくりになっているのは、こういった作品ではお約束だ。

しかしながら、本作が『死霊館』と大きく違い、また独立した作品として楽しめる最大の要因は、その展開にある。本作がホラー映画であることは間違いないが、前半がサスペンス、後半がオカルトで展開していくのだ。ある意味、2倍お得に楽しめる映画である。
annabelle3_mini『死霊館』からさかのぼること2年前、教会に通う新婚の夫婦がいた。妊娠中の妻ミアと医者の卵である夫ジョンだ。そんな二人の家に、家出してカルト集団に入った隣家の娘アナベルが、信者の男と二人で両親を惨殺したあげく侵入し、二人に襲い掛かる。男は駆け付けた警官に射殺され、アナベルは喉をかき切って自殺する。幸い二人は怪我を負うものの命に別状はなかったが、ミアには深い心の傷と、家にはアナベルが絶命時に抱いていた人形が残っていた・・・。

その後、不思議なことにというか、案の定というか、家で不可解な事が起こっていくわけだが、まずアナベルらが侵入するシークエンスが素晴らしくドキドキする。

強盗や誘拐による家宅侵入ならば、理由が分かる分、観客もある種の予想と心の準備が出来るが、カルト教団に入信しているという不気味さが、手ぶれカメラによる長回しとあいまって、異様な緊迫感を醸し出すのだ。その後の不可解な事柄も、ホラーというよりサスペンスタッチなカメラ割りや長回しで緊張感が続き、物語にぐいぐいと引き込まれていくのである。
annabelle4_miniついに家での出火と娘の出産で、心機一転、三人は引っ越すわけだが、捨てたはずの人形が新居に居座るところから、オカルトテイストの物語の幕開けである。

そこから、アナベルの霊がやどったその呪いの人形を軸に物語は動き出すわけだが、この人形自体は動かない。いや、正確には『チャイルド・プレイ』のチャッキーのように刃物をもって襲い掛かってくるわけでなく、不気味な存在感と様々な超常現象をもって、ミアを追い詰めていくのだ。

そして、敵の正体が明らかになったとき、「それ」との対決へと物語は加速していく。長回しから一変、カメラをじっくり構え、フレーム内の人物に対する余白を効果的に使うことで、期待と不安をあおる演出も巧い。

ただ、クライマックスの展開とオチまでが「原点回帰」というのが残念でならない。新しい一捻りを望むことが過ぎたる期待なのかは、ぜひ観てご判断いただきたい。



出演:アナベル・ウォーリス『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)
ウォード・ホートン『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)
アルフレ・ウッダード『それでも夜は明ける』(13)
ケリー・オマリーTVシリーズ「ゾウズ・フー・キル 殺意の深層」(11)
ブライアン・ホウ『デビルズ・ノット』(13)
トニー・アメンドーラTVシリーズ「ワンス・アポン・ア・タイム」(11~)

監督:ジョン・R・レオネッティ『バタフライ・エフェクト2』
脚本:ゲイリー・ドーベルマン
製作:ジェイムズ・ワン、ピーター・サフラン
製作総指揮:リチャード・ブレナー、ウォルター・ハマダ、デイブ・ノイスタッター、ハンス・リッター
撮影:ジェイムズ・ニエスト
美術:ボブ・ジームビッキー

STORY
ジョン・フォームは、わが子の誕生を控えた妻のミアに、ビンテージ人形をプレゼントする。だが、幸せに満ちた日々は、思わぬ事件で打ち砕かれる。隣家の夫婦を惨殺したカルト信者の男女が、ミアに襲い掛かったのだ。男は警官に射殺され、女はミアの人形を抱いて自殺する。その日を境に次々と奇妙な出来事が起こり、原因不明の火事に発展する。

幸いにも無事に救出されたミアは女の子を出産し、家族は血塗られた家を出る。ところが──引っ越しの荷物から捨てたはずの人形が現れる。実は男女が絶命の瞬間に邪悪な何かを呼び出していたのだ。果たして、人形に宿った怨念の正体とは、そしてその目的は──?
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/annabelle/
©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 
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