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白石晃士監督「ノーカットは非常に難しい。だからこそ、挑む価値がある」

白石監督インタビュー
【恐怖の言霊インタビュー】vol.4 白石晃士監督

韓国の障害者施設を脱走した連続大量殺人の指名手配犯の男から電話を受けたジャーナリスト・ソヨンはカメラマンとともに容疑者の独占取材をしに指定された廃墟へ向かう。廃屋となったマンションに閉じ込められ、「カメラを止めたら殺す」と脅される中、容疑者・サンジュンは事件の真相をカメラに向かって語る。彼はなぜ、18人もの人を殺したのか・・・。やがて明らかになるソヨンとサンジュンの忌まわしい過去が、新たな惨劇へと発展。密室で起こったその一部始終をカメラは記録していた・・・。

『ノロイ』、『オカルト』、『シロメ』、『カルト』や、現在カルト的人気を誇る『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズなど、次々とフェイク・ドキュメンタリーホラーの衝撃作を生み出し続けている白石晃士監督。

その期待すべき最新作が日韓合作で製作された『ある優しき殺人者の記録』です。

なんと86分ワンカットのP.O.V(ポイント・オブ・ビュー=主観映像)という、映画の常識を覆す全く新しい密室スリラーがここに誕生しました。恐怖、バイオレンス、エロス、そして狂気・・・。

P.O.Vのスペシャリストである鬼才・白石晃士監督にお話をお伺いしました!

白石晃士監督インタビュー

ある優しき殺人者の記録
「細かいことを気にしてて、デッカい面白い物作れるかって話」

Q 韓国で撮影された日韓合作ですが、国外での撮影にチャレンジされた経緯は?

私の監督作品をほぼ全てと言っていいくらい上映していただいている名古屋の映画館シネマスコーレの支配人の方から、知り合いの韓国の映画プロデューサーがホラー映画を撮れる日本人監督を探している、というお話をいただいて、「白石晃士さんどう?」って。そこから推薦していただいたって経緯ですね。

Q なぜ日本人のホラーを?

イ・ウンギョンさんという女性プロデューサーが城定秀夫監督で『ラブ&ソウル』という映画を一本作っているんですよ。それはラブコメだったんですが、その日本人監督の映画企画第二弾で、「次はホラーだ!」ということでお声掛けいただきました。

Q その企画意図は?

韓国には、日本のように低予算、要は一千万以下、時には三百万以下で、短期間で仕上げ、且つ作品も面白いという様な映画を作っている人がいないと。
韓国自体にそういう風習がないというか。インディペンデントでも映画を撮るってなったら、資金集めに長期間を費やして、家を抵当に入れて一発勝負!という、そういう場合が多いそうなんで。

Q 韓国では小規模で映画を作るっていう概念がないんですね。

ですので、イ・ウンギョンさんは韓国では珍しく短期間・低予算で面白い映画を作りたい、要するに経済的にローリスク、けどちゃんと面白いものが作れればリターンがあるという目論見で映画を作りたいという、韓国では進んだ考えだとは思うんですけども。

ある優しき殺人者の記録
Q 韓国での撮影はいかがでしたか?

韓国は本当に、何て言うんですかね、ご飯が美味しいですね。(笑)

Q ご飯ですか。(笑)

韓国の映画の現場では、日本みたいに“冷めたお弁当を出さない”っていうのが結構有名みたいで。撮影中に外食もしますし、お弁当も暖かいものでしたね。食事にすごく気を遣っていて、費用もかけるんです。

私は「チョッパル」って向こうの豚足がすごい好きになって。本当に美味しいんですよね、これ。チョッパルっていうのは…(この後チョッパルの話がしばらくつづきました。ニコ生でも豚足の話されていましたし、白石監督とってもお気に入りのようです・・・!)

Q ご飯以外には何かありましたか?

韓国は、いい意味でおおらかですね。まず、集合時間に集合しない。(笑)
撮影中に朝七時ホテルの下に集合とかってなると、七時にいるのは日本人だけですよね。で、大体15分、10分から20分までの間に皆徐々に集まり始めて、20分後位に出発するっていうのが大体、感じでしたね。

ある優しき殺人者の記録
Q 日本の現場だと遅れたら蹴飛ばされる…(恐)

日本だと緻密にスケジュールを組むので、ちょっとでもそれが崩れると予算が超過しちゃうから、(遅れると)ピリピリしがちですよね。韓国では映画の予算超過は当たり前で、「映画はそういうもんだ」っていう考え方があって。「ちょっと位オーバーしても良いんじゃない、面白くなれば」みたいな。「ケンチャナヨ」精神と言いますか。

でも、映画ってやっぱりそれ位の気持ちで作った方が面白くなると思うんですよね。ピリピリしながら、「やんなきゃ、やんなきゃ」って細かいことばっかり気にしてて、要は小銭を気にしててデッカい面白い話出来るかって話ですから。そういう点では韓国の映画作りへの向き合い方っていうのはすごく良いなって思いましたね。

Q 撮影現場での、キャストの方たちはいかがでしたか。

12月の韓国だったのですごい寒いのと、現場が廃墟で、床に積もっている塵が動くと舞い上がるんで、それでキム・コッピさんは鼻の下が鼻水であかぎれみたいな感じになって苦しそうでしたね。カットかかるたびに外に出られてましたね。でも、気持ちよく仕事には向かっていただいたなと思います。

ある優しき殺人者の記録
「映像を技術的に面白く見せるっていう可能性を追求したい」

Q 映画では「86分ワンカットの驚愕映像!」っていうことですけど、一応区切ってはいるんですよね?

そうですね。当然、撮影七日間なので、ずっと回してたわけではないです。(笑)
長くて7分程度で、大体、ポイントポイントでカットして、うまく繋がっている様に見せる。

Q じーっと見てたんですけど、全然分かんなかったです。「どこまで行くの?」と思っちゃいました。

最後まで行くんですよ。(笑)

Q 「86分ワンカット」に挑んだ理由は?

今回、映画のストーリーや撮影方法などは、非常に私のわがままを通させていただいたんですよ。
なので、自分がちゃんと面白いものを創れるということと、技術的にもなかなか他の人が真似できないことができるということをちゃんと見せ付けないといけないな、というのがありまして。

もちろんそれは、全て面白い映画になる方向に貢献するものではないといけないんですけど、そういう意味で面白い映画の内容はもちろんなんですけど、ヒッチコックとかデ・パルマみたいに映像を技術的に面白く見せるっていう可能性を追求したいところもあって、それでワンカットで観せるっていうのをやってみたっていうのはありますね。

ある優しき殺人者の記録
Q ノーカット撮影の極意とは?

物語が一室でリアルタイムで進行するので、お客さんを飽きさせない、面白い思いをさせ続けるっていうのは確かに非常に難しいです。だからこそ、挑む価値があるなという風には思うんですけども。

Q 実際ストーリーが2転、3転どころかどんどん展開していってすっかり引き込まれました。

そうですね、登場人物の立場というか関係性が常に変化するように意識して、観ている人を飽きさせない様にっていう工夫はしています。内容をちゃんと追っていれば、その変化を感じられて飽きない様にはなってると思いますね。

Q 最初に「絶対カメラを止めるな!」って言ってましたからね。そして、その包丁をつきつけられて撮影しているのが監督自身が演じられている『コワすぎ!』の田代っていう。(笑)時系列的にはどうなんでしょう?

これはもう完全に『コワすぎ!』と同一人物のつもりですね。
時系列的には、まだあまり考えてないんです。『ある優しき~』は2013年のクリスマスの頃の出来事なので。『コワすぎ!』劇場版が一体いつ頃の話なのかっていうのはベールに包まれてますので。時系列はおいおい考えるということで。

Q 本作では田代が結婚指輪してますよね。

そうなんです。『ある優しき~』のなかでは。それのことも考えなきゃなと思って。実は韓国人の誰かと結婚しちゃったのかな、とか。工藤ディレクターの元を離れたのかな、とか(笑)今年中に『コワすぎ!』の続編を撮るのでそこでかな。

Q 『コワすぎ!』とストーリー的にも繋がる?

『コワすぎ!』の田代が出てくるという点で繋がってるっていうことはありますよね。具体的に物語として何か共通してるっていうところまでは、考えてないんですけど、(神様や霊体ミミズ的な)“異界の存在の世界観”という意味でも共通はしてますね。

ある優しき殺人者の記録
Q 今回のエンディングがすごく意外で、今までの監督作とは違うと思ったのですが、心境の変化が?

プロデューサーの意向で“美しく終わりたい”というのがあって。私としても美しく終わるのはやぶさかではないですし、私はプロデューサーの意見は大事にするので。

Q 映画の中にもでてきた『素晴らしき哉、人生』のクリスマスの奇跡みたいな感じで終わるっていうのは?

きれいにっていうところから派生してると言えば派生してますよね。
自分の中で“納得の出来る美しい終わり方”っていうのは何だろうって思った時に、ハッピーエンドで大好きな映画として『素晴らしき哉、人生』があって。
ああいうことだったら私もものすごく納得出来るし、素直に感動出来るなっていう風に思って、そういう意味では自分が『素晴らしき哉、人生』を撮ったらどうなるかっていう様なニュアンスで作ったところはあります。

Q バイオレンスな白石晃士版『素晴らしき哉、人生』ってことですね。
インタビュー:根本 悠(トライワークス)
2014年8月26日ティ・ジョイにて収録
編集後記
2014年は白石晃士イヤーといっても過言ではありません。劇場公開作は本作も入れてなんと3本。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!史上最恐の劇場版』、さらに9月13日(土)には『殺人ワークショップ』の公開が控えています。また、山形ドキュメンタリー映画祭の納涼イベントとして、『コワすぎ!』シリーズのイベント上映も9月5日からスタート。さらにさらにBeeTVオリジナル番組『絶恐体感キモダメシ』と『悪夢の童話~現代版サイコホラー~』の2作品も配信中とのこと。白石監督の勢いはとどまるところを知りませんね!


ある優しき殺人者の記録 白石晃士(しらいし・こうじ)
監督・脚本・撮影

1973年生まれ、福岡県出身。石井聰亙監督『水の中の八月』(95)に制作進行として参加した後、自主映画『暴力人間』(共同監督:笠井暁大)を完成させ、ひろしま映像展’98で企画脚本賞・撮影賞を受賞。翌年、『風は吹くだろう』(共同監督:近藤太)で、ぴあフィルムフェスティバル’99準グランプリを受賞する矢口史靖監『ウォーターボーイズ』(01)のメイキングを経て、数多くのホラービデオを手がけた後に、『ノロイ』(05)で劇場作品デビュー。以降、ホラー系オリジナルビデオ作品を中心に監督をつとめ、2005年『ノロイ』にて劇場用長編映画デビュー。ホラーを中心に多くの作品を送り出し、特にフェイク・ドキュメンタリーで注目を集める。

『口裂け女』(2007年)『オカルト』(2008年)『タカダワタル的ゼロ』(2009年)『グロテスク』(2009年)『シロメ』(2010年)『超・悪人』(2011年)『カルト』(2013年)『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最恐の劇場版』(2014年)『殺人ワークショップ』(2014年)等




STORY
韓国の障害者施設を脱走した連続大量殺人の指名手配犯の男から電話を受けたジャーナリスト・ソヨンはカメラマンとともに容疑者の独占取材をしに指定された廃墟へ向かう。廃屋となったマンションに閉じ込められ、「カメラを止めたら殺す」と脅される中、容疑者・サンジュンは事件の真相をカメラに向かって語る。彼はなぜ、18人もの人を殺したのか・・・。やがて明らかになるソヨンとサンジュンの忌まわしい過去が、新たな惨劇へと発展。密室で起こったその一部始終をカメラは記録していた・・・。
『ある優しき殺人者の記録』
9月6日より、新宿バルト9ほか全国順次公開
出演: ヨン・ジェウク キム・コッビ 葵つかさ 米村亮太朗
監督・脚本・撮影: 白石晃士
製作:日活、ZOA FILMS
配給:ティ・ジョイ、日活
©NIKKATSU、ZOA FILMS

※現在配信中のBeeTVオリジナル番組『絶恐体感キモダメシ』の予告編はっけん。これも恐そう・・・!


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