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作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる

作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる 【恐怖の言霊インタビュー】vol.5 長江俊和監督

あることがきっかけで強い洗脳を受けた元主婦、江上志麻子。彼女を襲った、幸せな家庭を壊した本当の真実とは?全てを明らかにするため、志麻子の脱洗脳を試みる心理セラピスト 小田島霧花。志麻子の親友であり、ビデオ・ジャーナリストの鷲巣みなみが、洗脳を解く過程をカメラで追う。そこに映し出された恐るべき事実とはー。

2003年にフジテレビで放送され、大反響を呼んだカルト深夜番組『放送禁止』。

熱狂的なファンを生み、2本の劇場版も製作され、大ヒットとなった伝説のシリーズが遂に復活!「放送禁止」シリーズ劇場版第3弾『放送禁止 洗脳~邪悪なる鉄のイメージ~』。

ドキュメンタリーかと錯覚する衝撃的な内容や、真実を隠したミステリー仕立ての仕掛けが話題となり、ツイッター、フェイスブックなどがまだ浸透する前においても、インターネットや口コミでその存在が知れ渡ったのがこの「放送禁止」シリーズ。最新作のテーマは、“脱洗脳”。

もはや『放送禁止』という、一種のジャンルを確立したといっても過言ではない長江敏和監督にお話をお伺いしました!

長江俊和監督「作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる」
テレビで観ていただいていた方が、「あっきたきた!放送禁止!」となるように意識しました

Q ファンとしては待望の『放送禁止』シリーズ最新作ですが、本作で意識した部分などはありますか?

そうですね。『放送禁止』シリーズは前作『ニッポンの大家族』からすると5年ぶりということもあって、割と意識したのはテレビで放送していた様な雰囲気にしたい、というのがありました。劇場版で2作品撮ったんですけど、その際はテレビ放送から劇場版になるっていうことで、映画らしさというのも意識しながら撮影したんですよね。

Q 具体的にどのあたりが?

ナレーターをテレビ放送版と同じ鈴木ゆうこさんにお願いしました。あとは、例えば劇場版2作目っていうのは、ベロニカ・アディソンっていう映画監督が撮った映画ドキュメンタリーの一本であるっていうことで厳密に言うと“放送禁止”でもなかったんですよね、実は。『放送禁止』っていうのはサブタイトル的なイメージでした。

今回は『放送禁止』のカラーを前面に出して、ある理由で放送されなかったテレビ番組があって、それは一体何なのかという、ベーシックな基本設定を割と意識して作ったっていうことがありますね。テレビで観ていただいていた方が、「あっきたきた!放送禁止!」みたいな感じになるといいかなっていう。

Q あ、わかります。私もそうなりました。「これこれ!」って。笑 なぜ、今回はそのように?

久々だったので、原点に立ち返りたかったというのと、自分自身でも、『放送禁止』のもつ本来のおもしろさというのはそういう点かな、という感覚があって。初期の作品のようにやりたかったという気持ちがあったので、あまり劇場版だから、映画だから、というのは意識しないで撮りました。
長江俊和監督「作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる」
Q 『放送禁止』の撮影や作品作りの雰囲気は?

そうですね~。まず、『放送禁止』は打合せが本当に楽しいですね。本当、おっさんばっかりが集まって、ほとんど雑談ばっかりの打合せなんですよ。

Q おっさんばっかりで雑談ですか(笑)

こんな面白いドキュメンタリー観たとか、こんな事件があったとか、こんな体験しましたとか、皆で雑談が1時間か2時間位続くんですよね。そこから、「何かさっきのあの話良いんじゃない」とか言ってシナリオに付け加えたりとかして。

Q 雑談がシナリオに。

実際、映画の内容に関して話すのは30分くらいかもしれないです。それを僕が持ち帰って、一回シナリオを作るんですけど、シナリオの中に入れる“伏線”も、ネタバレしないように書くんですよ。オチが書いていないシナリオをプロデューサーやスタッフに見せて、「分かった人いる~?」とかって、クイズ大会みたいになりますね。

「俺は分かんなかった」とか「これはこうじゃないの?」「当たり!」とか言って。(笑)ま、そういうのは撮ってて楽しいですね。こうしなきゃいけない、というきまりもなく自由に出来るというのもいいですよね。

Q 撮影や編集に関しては?

そうですね。撮影もそうですけど、編集でも、普通やらない様な繋ぎなんかも、「ちょっと実験してみよう」とか思ったりして。例えば、エンドロールが無音という場合もありますし、「ブブブブブ」というヘリの音だけ入れてみたりとか、色々遊べるんで。そういう意味では色んな実験が出来て楽しいですよね。

Q 『放送禁止』シリーズにはファンも多いと思うんですけど、ファンに関してはいかがですか?

放送禁止のファンの方って、本当に鋭いんですよね。(笑)テレビ放送の初期の頃とは違って皆さん見方が分かってきて、解読しながら観る人もいるので。

Q 謎解きしながら観るというのも『放送禁止』の魅力のひとつですよね。

そうですね。テレビ放送時に2chの実況を見たりしていると、鋭い人はすぐ見破っちゃうんですよね。で、みんな最初は「何言ってんだ?」という反応なんですけど、伏線に気づくと「神キターーーー!!」とかって。(笑)
長江俊和監督「作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる」 何か「違和感」を感じたら、それが実は大きな伏線だったりする

Q 大盛り上がりですよね(笑)。伏線はどのように作るんですか?

そうですね。たとえば、ミステリー小説なんかでもそうだと思うんですけど、何か「違和感」を感じるようなシーンを残して、それ自体は意味のないシーンなんだけど、なんか「違和感」を感じて、それが実は大きな伏線だったりするっていう風にすることはありますね。

大きなオチを最初に決めて、ストーリーを作り、そこに合う伏線を付けていくって感じですね。

Q そういう風に作ってるんですね。

特別に、一つネタバレしますと、劇場版で復讐執行人っていうのをやったんですけど、あれご覧になりました?

Q はい。『放送禁止 劇場版 ~密着68日 復讐執行人~』。(※以下ネタバレです!)

仮面の女が入れ替わってたっていう設定の伏線をどうはろうかなと思って悩んでたら、テレビでラーメン特集をやってたんですよね。そこで、替え玉無料のラーメン屋が紹介されていて。「替え玉無料・・・あっ替え玉!」とひらめいて、ラーメン屋のシーンにして、替え玉の上に替え玉っていう張り紙を貼って、それを伏線にしました。

何かそんな感じで、伏線をはっていくっていう。ま、馬鹿馬鹿しくて楽しいですよね。(笑)

Q 確かに、テレビシリーズの大家族でも「ジャストミート」とか。笑っちゃいましたもん。(笑)

そうですよね。「ジャストミート」や「ラー油がなくてキレる夫」とかは、深夜にシナリオに書いていて、真夜中に一人で笑ったりしていました。

Q 『放送禁止』はコメディ要素もありますよね。

そうですね。私も遊び心でやってる部分があるのですが、ファンの方もそこに食いついてきてくれて、とてもうれしいですね。
長江俊和監督「作品作りは本当に楽しい。雑談合戦からアイディアが生まれる」 Q 今後、『放送禁止』シリーズの新作の予定は?

もちろん、続編は考えています。それに、テレビでまた『放送禁止』やろうって話もなくはない。劇場版も引き続き、やっていきたいと思ってます。『放送禁止』のテーマは普遍的にあるので。

Q 劇場版以外だと、小説やテレビ放送も手がけられていますよね。

先日『出版禁止』という小説を出しまして。『放送禁止』の手法を使った『放送禁止』の活字版という形ですね。

Q 周りでも「コワい」と話題です。先日テレビで放送された『share』はアプリと連動させたり、いろいろと新しいことに挑戦されているんですね。

そうですね、そういう新しい試みは僕も好きなので。でも、やっぱり『放送禁止』が好き!とおっしゃっていただくことが多いので、今後も新しいことには挑戦しながら、『放送禁止』も続けていきたいですね。

Q 私も1ファンとして、たのしみにしています!

インタビュー:堀田ももこ(ホラサスDAYS編集部)
編集後記
長江監督の代表作といえばもちろん『放送禁止シリーズ』かとは思いますが、その他に『アサギの呪い』という作品があるのをご存知でしょうか?これは、ホラサス編集部堀田のNO.1トラウマ作品なのです。(当時小学生だったということもあるかと思いますが・・・。)

2000年に放送された短編オムニバス形式のテレビドラマ『学校の怪談 春の呪いスペシャル』の中のひとつです。長江監督以外には清水崇、中田秀夫、鶴田法男監督などの著名なホラー映画監督も参加しており、一種ホラー映画監督の登竜門的な存在だったのかもしれないですね。ホラーとしてのクオリティはどれもとても高く評価されており、中でも『アサギの呪い』はダントツにコワいと、言われていた伝説の作品です。

今回、インタビューさせていただくにあたって、長江監督の作品だったということを知り、小学生だった私にトラウマを植え付けた(笑)監督と、こうして対面して当時のお話を聞けるなんて・・・と、なんだか感慨深いものがありました。

★IMG_7786 長江俊和(ながえ・としかず)
1966年大阪府出身 映像作家・小説家
■映画『放送禁止・劇場版~密着68日復讐執行人~』『放送禁止・劇場版2~ニッポンの大家族~』『パラノーマル・アクティビティ第2章TOKYO/NIGHT』『不安の種』■テレビ『放送禁止』シリーズ『富豪刑事』『eveのすべて』■小説『出版禁止』(新潮社)



STORY
あることがきっかけで強い洗脳を受けた元主婦、江上志麻子。彼女を襲った、幸せな家庭を壊した本当の真実とは?全てを明らかにするため、志麻子の脱洗脳を試みる心理セラピスト 小田島霧花。志麻子の親友であり、ビデオ・ジャーナリストの鷲巣みなみが、洗脳を解く過程をカメラで追う。そこに映し出された恐るべき事実とはー。
『放送禁止 洗脳~邪悪なる鉄のイメージ~』
公式サイト:http://housoukinshi.ponycanyon.co.jp/
©2014「放送禁止 洗脳~邪悪なる鉄のイメージ~」製作委員会


 
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