このたび、『ひかりのまち』『イン・ディス・ワールド』『いとしきエブリデイ』といった多彩なジャンルの快作を放ち、近作『イタリアは呼んでいる』を日本で大ヒットさせたマイケル・ウィンターボトム監督最新作『天使が消えた街』が、9月5日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて、全国順次公開することが決定いたしました。
本作の題材となっているのは、イタリア犯罪史上最も国際的な注目を浴びたとも言われる実在の事件「ペルージャ英国人女子留学生殺害事件(アマンダ・ノックス事件)」です。ここでまず、「アマンダ・ノックス事件」について触れておきましょう。
■ アマンダ・ノックス事件とは?
2007年11月2日、イタリアのペルージャにある共同フラットの一室で、メレディス・カーチャーというイギリス人留学生の他殺体が発見された事件。まもなく警察に逮捕されたのは、ルームメイトのアメリカ人留学生アマンダ・ノックスとその恋人のイタリア人男性。
しかし事件は“一件落着”するどころか、捜査関係者さえも予想のつかない展開を見せていった。殺人容疑者アマンダが若く美しい女性だったため、地元イタリアのみならず米英のメディアの報道合戦が過熱化。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられ、アマンダや被害者のプライベートの情報がネット上に拡散するなど、事件の本質とはかけ離れたさまざまな問題が噴出した。さらに捜査上のミス、決定的な証拠や動機の欠如といった複数の要因により、裁判の判決が二転三転したことも混乱に拍車をかけた。
2007年11月2日、イタリアのペルージャにある共同フラットの一室で、メレディス・カーチャーというイギリス人留学生の他殺体が発見された事件。まもなく警察に逮捕されたのは、ルームメイトのアメリカ人留学生アマンダ・ノックスとその恋人のイタリア人男性。
しかし事件は“一件落着”するどころか、捜査関係者さえも予想のつかない展開を見せていった。殺人容疑者アマンダが若く美しい女性だったため、地元イタリアのみならず米英のメディアの報道合戦が過熱化。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられ、アマンダや被害者のプライベートの情報がネット上に拡散するなど、事件の本質とはかけ離れたさまざまな問題が噴出した。さらに捜査上のミス、決定的な証拠や動機の欠如といった複数の要因により、裁判の判決が二転三転したことも混乱に拍車をかけた。
「犯人は誰か」は重要ではない
マイケル・ウィンターボトム監督がこの事件で興味を抱いたのは、「真犯人は誰か?」ということではなく「いったいこの事件の何が大衆の目を引きつけているのか?」ということだったそう。本作は、再現フィルム的なクライム・スリラーや、真犯人を裁くためのミステリー映画ではないのです。
「このうえなく惨たらしく悲劇的な殺人事件が、ふたりの若い女性を主人公にした昼メロ調のジェットコースター・ドラマに仕立てられ、大衆に消費されていったのはなぜなのか?」メディアの姿勢に疑問を投げかけながら、ウィンターボトム監督独自の切り口でこの事件を捉えた、観る者の心を揺さぶる重層的な作品となっています。
本作の舞台となるのは2011年、イタリア・トスカーナ州シエナの街。主人公は、シエナの街で4年前に起きた「イギリス人留学生エリザベス殺害事件」の映画化をオファーされた、気鋭の監督トーマス・ラング。リサーチのため現地に乗り込んだ彼が目の当たりにしたのは、大衆向けに扇情的な報道を繰り返すメディアの実態でした。
はたして被告のセクシーなアメリカ人留学生ジェシカは、本当にエリザベスを殺したのか? その真偽が不確かな状況のもと、創作上の迷いに苦しむトーマスは、天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒やされ、被害者エリザベスとその遺族に寄り添った映画を作ろうと決意します。やがてその試みは、離婚した妻との間で愛娘の親権を争っているトーマス自身の行き詰まった人生にも、変化をもたらしていくのです。
“愛”と“尊厳”
主人公の映画監督・トーマスを繊細に演じたのは、『ラッシュ/プライドと友情』のダニエル・ブリュール。『アンダーワールド』シリーズのようなアクション大作から、良質なドラマまで幅広く活躍するケイト・ベッキンセイルが、トーマスのリサーチに協力するジャーナリストに扮しています。また世界的なトップモデルのカーラ・デルヴィーニュが、窮地に陥ったトーマスを救う女子大生メラニー役で出演し、本作で長編映画デビューを果たしています。
「あれ? なんだか実際の事件と異なる点がいくつかあるなぁ・・・」とお気づきの方もいらっしゃると思うのですが、ウィンターボトム監督は、実際の事件から登場人物の名前や舞台となる街を変更。さらに、映画監督トーマスや女子大生メラニーといった架空の人物を創造し、ドキュメンタリー的な題材とフィクションの手法を大胆に融合させているのです。主人公の映画監督トーマスは、少なからずともウィンターボトム監督自身の心情を投影したキャラクターになっているのでしょうね。
そしてウィンターボトム監督が、本作を通して探求したのが“愛”や“尊厳”という根源的なテーマです。若くして命を奪われた被害者と遺族の悲しみに目を向けるとともに、心のよりどころを求めて苦悩するトーマスと愛娘の関係を見事に描き出しています。実際の事件の被告となったアマンダ・ノックスは人目を引く美貌の持ち主ゆえに“天使”とも呼ばれましたが、ウィンターボトム監督は観客それぞれがかけがえのない愛する者=“天使”に思いを馳せずにいられなくなる、エモーショナルな作品を紡ぎ上げました。
最後に、本作についての監督のコメントを一部抜粋してご紹介したいと思います。
これは殺人自体についての映画ではない。なぜ我々人間はそのようなことに引きつけられるのかを描いている。そして事件を直接描くというよりも、被害者の親の気持ち、犯人として告訴された人の親の気持ちはどういうものか、そして当事者でいることはどういうことかという視点から、その中間に立ち、数歩離れたところからひとりの主人公を通して描いていく。
映画『天使が消えた街』は、9月5日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて、全国順次公開です。
監督:マイケル・ウィンターボトム『ひかりのまち』『イン・ディス・ワールド』『イタリアは呼んでいる』
出演:ダニエル・ブリュール『ラッシュ/プライドと友情』|ケイト・ベッキンセイル『アンダーワールド』シリーズ|カーラ・デルヴィーニュ『PAN ネバーランド、夢のはじまり』
2014年/イギリス・イタリア・スペイン合作/シネマスコープ/カラー/101分/原題:The Face of an Angel/字幕翻訳:松浦美奈/配給:ブロードメディア・スタジオ
STORY
2011年、イタリア・トスカーナ州シエナ。中世の雰囲気漂うこの美しい街は、4年前にイギリス人女子留学生が殺害された事件の裁判の話題で持ちきりだった。事件の容疑者であるルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカと被害者のエリザベスがどちらも若く美しい女性だったため、地元イタリアのみならず米英のマスコミ報道が過熱化。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられ、大衆向けに扇情的な報道が繰り返されていた。
この事件の映画化をオファーされた気鋭の監督トーマスは、ジャーナリストのシモーンと共に現地に乗り込む。「事件」の真偽が不確かな状況の中、創作上の迷いに苦しむトーマス。彼はシエナで出会った天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒やされ、“本当に撮るべきもの”に気付き始めていく・・・。
公式サイト:http://www.angel-kieta.com2011年、イタリア・トスカーナ州シエナ。中世の雰囲気漂うこの美しい街は、4年前にイギリス人女子留学生が殺害された事件の裁判の話題で持ちきりだった。事件の容疑者であるルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカと被害者のエリザベスがどちらも若く美しい女性だったため、地元イタリアのみならず米英のマスコミ報道が過熱化。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられ、大衆向けに扇情的な報道が繰り返されていた。
この事件の映画化をオファーされた気鋭の監督トーマスは、ジャーナリストのシモーンと共に現地に乗り込む。「事件」の真偽が不確かな状況の中、創作上の迷いに苦しむトーマス。彼はシエナで出会った天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒やされ、“本当に撮るべきもの”に気付き始めていく・・・。
©ANGEL FACE FILMS LIMITED / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014.